勢至菩薩と気づきの力
勢至菩薩は、私たちに大切なことに気づかせてくださる仏です。
では、その「大切なこと」とは何でしょうか。
何事においても、気づけなかったことに気づくには二つの力が必要です。
ひとつは自分以外の力、そしてもうひとつは自分自身の力です。
とりわけ仏道修行における気づきとは、悟りの世界へ向かうための気づきです。
自分以外の力とは、御仏(みほとけ)の力です。
しかし、この御仏の力は、実は私たち自身の中にあります。
言わば「本当の自分」とでも申しましょうか。
仏道修行とは、この本当の自分を探し求める道でもあるのです。
そして、自分以外の力である「本当の自分」に気づかせていただくために、私たちは自らの力で修行を行います。
不断の修行によって、己が本当の自分としての御仏を見出すための素地を整えるのです。
日常生活を営みながらでもできる修行があります。
それが、伝統仏教の仏事――法事や墓参などの供養修行、そして護摩祈祷への参列や護摩札奉安のような祈願修行です。
これらは、ただ形式に従うだけではなく、己の心を磨き、御仏の智慧に触れるための尊き実践の場となります。
