曼荼羅と心の安らぎ
真言宗では、曼荼羅を大切にしています。曼荼羅とは、仏さまの世界や宇宙の姿を象徴的に表した図で、見るだけでも心を整え、仏さまの智慧に触れることができます。
玉泉寺の本堂にも、必ず金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅の二つが掲げられています。金剛界曼荼羅は大日如来の智慧を中心に据え、揺るぎない原理や基盤を示します。胎蔵曼荼羅は大日如来の慈悲を象徴し、無数の仏菩薩が広がる世界を描いています。この二つの曼荼羅は、真言宗の教えの中心である「縁起と基体」の両方を示すものとして、私たちの信仰の拠り所となっています。
仏教では、世界や心を二つの視点から見ることができます。ひとつは「縁起」、すべてのものは互いにつながり合い、支え合うことで存在しているという考え方です。もうひとつは「基体」、そのつながりの奥に揺るがない智慧や真理があるという考え方です。
胎蔵曼荼羅は、花が咲き広がるように、無数の仏さまや菩薩が広がる世界を描き、縁起の世界を表しています。私たちが互いに支え合い、助け合うことは、この曼荼羅の世界と心を通わせることにほかなりません。日々のご縁を大切にすることが、私たち自身の心を育むのです。
一方、金剛界曼荼羅は、花の根っこのように大地にしっかり根を下ろす大日如来の智慧を描いています。これは揺るがない基体であり、人生の中で困難や迷いに直面しても、心の支えとなる原理を示しています。
真言密教では、この二つの曼荼羅をあわせて理解します。「縁起」によって互いのつながりを見つめ、「基体」によってその奥にある絶対的な智慧に支えられる。胎蔵と金剛、この二つの世界を行き来することで、私たちは心の安らぎと生きる力を得るのです。
玉泉寺でお祈りをするとき、目の前の曼荼羅を通して、私たちのつながりと、その奥にある智慧を感じてみてください。曼荼羅の世界に心を合わせることで、日常の一瞬一瞬が豊かさと気づきに満ちてきます。